桜時雨の降る頃
「なんでって……、さっき欠伸したからかな?」

苦し紛れの嘘。

多分、朔斗に通用はしない。騙されてくれれば楽なのに。


「アホか。違うだろ。つくならもっとマシな嘘をつけ」

「…………だって」

何も答えられない。

1人で複雑な感情を持て余してる状態だなんて説明のしようがない。


沈黙を貫いていると


握られた手首がふいに引っ張られて


また、朔斗の白いシャツが目一杯に広がった。


ドクンドクン、と少し速いような鼓動が朔斗の胸から聴こえる。


何、これ…………

どういう状況??

頭の中が真っ白になった。


朔斗の手がわたしの後頭部をそっと支えながら撫でてくれているのは分かる。


「…………泣くなよ。お前が泣くと、俺どうしたらいいか分かんなくなる」


掠れがかった声。

いつも言うことに淀みがない朔斗。

なのに今の朔斗は、本当にどうしたらいいのか分からなくて迷っているようだった。


ーーーーどうしよう。


朔斗が優しいのが嬉しい。






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