恋におちて
「何で居るんだよ…」
休みだと知っていて、一緒に過ごす
つもりでいたさなえの機嫌を直すのに
朝から若干疲れを感じながら
帰ってくればドアの前に親父がいた。
「逃げられては敵わないからな。」
意地の悪い笑みを浮かべ、
早く支度しろと、せっつく親父…
せっかくの休みなのに休まる暇がない。
「とりあえずシャワー浴びさせろ。」
部屋の鍵を開け、親父を中に促しながら
腕時計で時間を確認する。
適当にしててと親父に声をかけ、
風呂に直行して、熱いお湯を浴びる。
出来れば湯につかりたかったが
仕方なくシャワーだけで済ませた。
「朝飯は食べたのか?」
「あ~眠くなるからいいや。」
「そんなに忙しいのか?」
「まあね」
冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだし
喉を潤す。
「母さんは?」
「今日は大人しく家にいるそうだ。」
学生の頃から住んでる1DKのマンション。
25畳近い空間にソファーとベッドがある。
ソファーに座り、TVをつけず待つ親父と
話をしながら着替えを済ませ、
等身大の鏡を見ながら髪を軽くセットする。
「今日はって次回があるのかよ…」
「相手の方に余計な気を使わせないように
だそうだ。」
「あぁなるほどね。」
「支度が出来たなら行くぞ。」
「はいはい」
コートを手に歩く俺に、親父は腰をあげ、
すたすたと玄関に向かう。
ハァ~
ホントにゆっくり出来ないことに
ため息しか出ない。
この時の俺は自分の人生が一変する出逢いが
待ってるとはこれっぽちもおもっていなかった。