恋におちて
二人で散策でもしてくればとの
お父様の言葉に、二人でホテル自慢の
庭園を歩くことになった。
「足元に気をつけて。」
と、さりげなく差し出された手をとったら
離すタイミングがわからず、繋いだままに
なってしまった。
一歩先を歩く彼に着いていく感じで
ゆっくりと散策する。
「普段から着物を?」
「はい、教室に行くときは着物で行くように
してます。」
師範の資格を取れた私は週に何度か
通っていた教室の手伝いに行っていた。
「じゃあ着付けも自分で?」
「はい。」
「凄いな…」
「慣れるまでは大変でしたけど、でも、
そんなに難しい訳ではないですよ。」
何気ない会話も心地良く感じるのは、
目に映る美しい景色のせいだけでは
ないような気がする。
「どうしてお医者様に?」
お父様とお兄様が同じ警察庁に勤めていると
聞いて不思議に思っていた。
「ん~改めて聞かれると答えに困るけど…」
「あっ…ごめんなさい。」
「いやっ困るというか、恥ずかしいというか…」
「恥ずかしい?」
医師になるのに恥ずかしい理由って…と考えて
えっ…と思ったのが声に出ていたらしい。
「えっ?あっ違うから!疚しい理由じゃないから」
歩を止めて必死になって否定する彼を
可愛いと思って吹き出してしまった。
「恥ずかしいって言ったのは親父への
反抗心…っていかにも子供っぽい理由だったから」
ほんの少し赤くなった顔を隠すように前を
向いてしまった彼の耳も赤くなっていて、
イケメンでも照れるんだ…なんて思った。