恋におちて

眉目秀麗な男 side 深雪



先方が予約してくれていたホテル内の料亭で
向かい合うように座ってからどれくらい
時間が過ぎただろう…

料理が運ばれてくるまでと、運ばれてからも
母と先方のお父様との会話は途切れることは
なかった。


とりあえずお互い簡単な自己紹介したあと、
亡くなる前の父の話や、私の仕事の話、
相手の方の仕事の話など話題は尽きなかった。


高橋 晃さん。
年は二つ下と聞いて驚いた。
26で結婚なんて…と尚更お見合いと
程遠いなぁと思った。

仕事は外科医と聞いてさらに驚いた。

イケメンの20代とお見合いが結びつかず
違和感だけが残った。


私の知らなかった父や母の話も聞けて
感慨深い時間でもあった。


高橋 和志さん…お父様と父は仕事の
同僚だったらしい。

父が亡くなったあとも何かと気にかけて
くれていて、力になってくれたと母は感謝の
言葉を口にすれば、すかさず全然甘えてくれ
なかったと、お父様は言い換えた。

だから、今回相談を受けたときに
必ず力になるとはりきったそうだ。

「深雪ちゃんが可愛らしいのは知っていたから
よその男にやるならうちに貰いたい。」

正面切って言われると照れてしまい、
赤くなる顔を隠したくて返事もそこそこで
俯くことしか出来なかった。

28になろうって女が気の効いた返しも
出来ないなんて……
無駄にイケメンなお父様を少しだけ恨んだ。


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