恋におちて
「どうぞ。」
私の家の前で車のドアを
開けて待ってくれている彼。
時刻は約束通り19時少し前。
「ありがとうございます。」
こんな風に男の人の車に乗ったことのない
私の心臓は最早爆発寸前…
あまり車には詳しくないけど、
高級だとわかる車内の広さとシートの
座り心地の良さにそわそわして落ち着かない。
「…会ってくれてありがとう。」
「……えっ?」
突然の感謝の言葉に意味がわからず
シートベルトを手にしたまま
運転席に座る彼に視線を向けた。
「急ぎすぎてる自覚はあるだ。」
と告げる彼に少し戸惑う。
「きちんと話をしてきた。」
「……はい。」
「昨日の今日で信じてもらえないと思うが
君との結婚を真剣に考えている。」
「………」
真っ直ぐ前を向いていた彼の視線が
私に向けられ、その強さに息がつまった。
「けして軽い気持ちじゃない。」
「はい。」
それはわかってる。
「親父も君のお袋さんも関係ない。」
真っ直ぐで力強い視線と言葉から
彼の真剣さが伝わってくる。
「俺自身が君との結婚を望んでる。」
「………ホントにいいんでしょうか」
やっと返せた私の言葉はとても弱々しくて…
自信のなさを隠しきれない自分に嫌気がさす。
迷いのない真っ直ぐな視線は
私が逃げることを許してくれなくて…
「君の不安を一日でも早く拭えるよう、
俺のことを信じてもらえるよう、努力する。
だから、この手をとってくれないか?」
そっと差し出された右手。
大きなその手に震える手でそっと触れる。
「よろしくお願いします。」
もう、この手を拒む理由はなかった。