恋におちて


“一週間”と勝手に決めていた
タイムリミットはたった数時間で終わりを
つげた。

夕食を済ませ、部屋で週明けからの
仕事の準備をしていたら、ノックとともに
部屋のドアが開いた。

ノックの意味ある?
覗きこむ母に何?と視線を向けると

「明日、19時頃に迎えにくるそうよ。」

「………?」

「仕事の都合で遅れる時は連絡しますって。」

「……えっ?」

「あなたの返事を聞きたいって。
ってどういうこと?」

「それって…」

いきなりの展開についていけない私と
話の内容が見えない母との会話が
噛み合う訳がない。

「……とりあえず伝えたから。」

母が先に折れる形で親子で
みつめあうという変な場面に終止符は
うたれた。

“けじめをつける”と言った彼。
男性とちゃんとに付き合ったことの
ない私は、もちろん別れ話の経験もない。

「………えっ」

だんだんと速くなる鼓動に戸惑う。

待つつもりでいた。

時計を見ると針は21時45分をさしている。

「あのあと話をしに行ったの?」

呟く自分の声が震えていた。

仕事が忙しいと言っていた。
目の下にうっすらだがクマもできていた。

てっきり家に帰って休んでいると思って
いた。

「どうしよう…」

すぐに行動に移してくれた彼の気持ちは
正直嬉しい。
だけど、相手の彼女のことを思うと
胸が痛む。

「どんな顔して会えばいいの…」

経験したことのない気持ちの揺れに
戸惑いは大きくなるばかりだった。














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