キミとまた違う未来で、この桜を見上げよう。
近所の人の話し声や車が通る音が鮮明に家の中まで聞こえてくる。
お母さんは懐かしいこの家を静かに見回している。
「お茶を…ど、ど、ど、どうぞ…!」
「あら、ありがとう」
「……なんであなたがそんな緊張してるわけ?」
七笑が何故か自分の家のようにお茶を淹れて、手を震わせながらお母さんの前に置くと、居間の隅に旭と座った。
お茶はきっと旭が淹れたんだろうけど、あなたが緊張する意味が分からない。
でも七笑が緊張してくれているお陰か、私は前よりも手が震えてない。
それでも言葉が出てこない。
言いたいことはあるはずなのに、本人を目の前にすると言葉が喉に引っ掛かる。
「…素敵なお友達ができたのね。
今も旭くんと仲良くしてるのには驚いたわ」
「高校でできた友達よ。旭とは…腐れ縁みたいなものね」
湯呑みを撫でるお母さんの手には皺が増えていて、それだけ時間が経ったのだと痛感する。
でも声も微笑みも変わらずに大好きだったあの時のお母さんと一緒だ。
「…あの花火大会で美瑚に会った時、いつかは向き合わないといけない私の罪を償う時が来たんだと思ったわ。
私の帰りを待ってテーブルで眠ってたあなたの姿は今まで忘れたことはなかった。
正直、すぐ追い返される覚悟でここに来たの。
私はあなたを置いて逃げた、最低の母親だから…」