キミとまた違う未来で、この桜を見上げよう。
自ら海に一歩近づいて、一度大きく深呼吸をする。
そして次に息を大きく吸い込んで、吐き出すと同時に大声を出した。
「…私は……みんなが大嫌い!!」
こんな大声を出したのは何年ぶりだろうか。
後ろを見ると私の大声に驚く唐木田さんが立ち尽くしていた。
その姿につい苦笑いをしてしまう。
「…私は二度、大切な人に裏切られた」
「………っ!」
一度目は自分の母親だった。
私は物心ついたときからお母さんしかいない母子家庭だった。
決して裕福ではない、どちらかといえば貧しい生活だった。
それでもお母さんはいくつ仕事を掛け持ちして毎日クタクタになるまで働いても、私の前ではいつも笑顔を見せてくれた。
疲れてるはずなのにちゃんとご飯を作ってくれて、いつも一緒にご飯を食べている時間が幼い私の一番の楽しみだった。
お母さんが私のために頑張ってくれてる、だから私も幼いなりに理解して我が儘を言わずにずっとお母さんが帰ってくるまで家で待っていた。
待っていればお母さんは遅くなってもちゃんと私のところに帰ってきてくれる、そう思っていたから。