キミとまた違う未来で、この桜を見上げよう。
お母さんがいなくなった理由を教えてくれたのは中学の入学式の時だった。
入学式に親と来ている生徒を見て、私はお母さんのことを思い出した。
「おばあちゃん、お母さんはどうして私をおいていなくなったの?」
私は隣にいるおばあちゃんを見ずに満開の桜の木の下で親と写真を撮る生徒を見つめていた。
視界におばあちゃんが私を見てから、私と同じ方を見たのが分かった。
しばらくしておばあちゃんがやっと教えてくれた。
お母さんが私の前から消えた理由を。
「……当時、お母さんには恋人がいたの。
その人と結婚も考えてたんだって。
だからその人に9歳の娘、つまり私がいることを話したら『俺の子供じゃない子供はいらない。連れてくるなら結婚はしない』って言われたんだって。
それでお母さんは私を捨ててその人と結婚する道を選んだ。
笑えるでしょ?お母さんは愛娘よりも恋人を選んだのよ」
大好きだったお母さんに裏切られた、この理由を聞いて率直に思ったのはこれだった。
心のどこかでは信じてた。
お母さんがいつかまた私の前に帰ってくるんじゃないかって。
それなのに裏切られた気持ちが大きくて、お母さんは最初からいなかったことにしようと思い始め、いつしか自分に近づく人は警戒するようになった。