泥酔ドクター拾いました。
「あっ、藤代さん。お風呂使い方分かった?温まったならいいんだけど。」

リビングの座り心地の良さそうな革張りのソファに座って、本を読んでいたらしい大和田先生は、私の声に反応するように振り向いた。

眼鏡の奥の瞳を細めて、柔らかく微笑むものだから、私の胸が小さく飛び跳ねる。

大和田先生は、本を閉じるとおもむろに立ち上がり、私にソファーに座るように促す。

「コーヒーしかないけど」

私が促されるままソファーに座ると、先生は苦笑いを浮かべてながら目の前にコーヒーを出してくれる。

小さくお礼を言った私は、コーヒーを一口啜ると、部屋をぐるりを見回した。

先生が読んでいたのは、英字で書かれている医学書のよう。
同じ間取りだと思っていたのに、私の部屋とは比べ物にならない広さだし、壁紙や建具は同じデザインなのにインテリアが違うだけで私の部屋とは全く異なるモノトーンでまとめられたシックな部屋だ。

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