泥酔ドクター拾いました。
「もうっ!!」

いくら不審な男だからって、こんな所で怪我でもされたら、そっちの方が後味が悪いじゃない。


私は彼を、私の真上にある彼の部屋――301号室まで、千鳥足で歩く彼を介抱して連れていくことにした。

千鳥足の彼は、やっぱり階段を昇ることが大変だったよう。

隣で肩に手を回して介抱しようと思ったけれど、私よりも随分と高い身長の彼を担ぐのは困難だった。

仕方なく、私は彼を後ろから押すようにして昇っていく。


成人男性、細いっていってもやっぱりそれなりに力を込めないと私まで足を滑らせそうになる。

それでもどうにか階段を昇りきり、彼の家の玄関ドアの前まで送る。


「ありがとう、お姉さん」

深夜2時。

彼は私の苦労なんて知らず、目を細め、爽やかな笑顔で私に手を振った。


一瞬、胸が高鳴った気がした。

ううん、こんな泥酔男に胸が高鳴るはずなんてない。
きっとこの高鳴りは、成人男性を押して階段を昇ったせいだ。

うん、絶対そうだ。

誰がこんな泥酔男の笑顔に胸を躍らせるものか。


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