泥酔ドクター拾いました。
「……そうですね。いつか人間はみんな死んでしまいます。斎藤さんも私も、みんな」


斎藤さんの質問に私は一瞬たじろいでしまったけれど、何とか平静を装って斎藤さんの背中に語り掛ける。

斎藤さんが欲しかった答えではないこと位、分かっていたけれど、今の私にはこんな言葉しか答えを見つけれられずにいる。


「藤代さん。僕はもう、そんなには長くないんでしょ?リハビリをしたって無駄だし、それにホスピスに行くことに決まっているんでしょ?」

中年と呼ばれる世代を少しだけ過ぎた斎藤さん。彼にはまだ大学生の息子がいることだって知っているし、自営業の彼が入院しているせいで仕事を休んでいるから奥様だって生活に苦労しているってことを知ったのはつい最近のことだ。


斎藤さんが寝返りを打つと、私を真っすぐに見つめる。有無を言わさぬほどに射抜くようにして私を見据えた。

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