泥酔ドクター拾いました。
沈黙の間を二人の間に冷たい夜風が吹き抜けていく。

「この間の斎藤さんのことがきっかけ?」
俺の質問に、彼女は大きく首を横に振る。


「地元に帰るって聞いた。帰って何すんの?」

別に藤代さんを責め立てたいわけではないというのに、口調がとげとげしくなってしまう。

「看護師しますよ、もちろん。この仕事、嫌いなわけじゃないもん」
そう言って曇った夜空を見上げる藤代さんの横顔が、わずかに微笑んだのが分かる。

きっと、この仕事楽しくて好きで仕方ないのだ。
それだけはわかる。

「ここでも看護師は出来るだろ?」

「そうなんですけどね……」

彼女は空に向かってぽつりと呟くと悲しそうに笑って見せる。
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