泥酔ドクター拾いました。
「まずは、大和田先生が関わることになる整形外科病棟に案内します」

還暦を過ぎた院長に簡単な挨拶を済ませると、挨拶回りのために院長の半歩後ろについて歩く。

医学生の頃、非常勤講師として目の前を歩く院長の循環器の授業を受けていたのは、かれこれ10年以上前だった。

当時、熱血講師だった院長の授業は、臨床現場での体験談も盛りだくさんで、授業後に院長を捕まえては、質問攻めにしたもんだ。

毎回質問ばかりしていた俺を、院長も学生の頃から可愛がってくれて、研修医を経て整形外科医を選択した後も、定期的に連絡を取り合っていた。

大学病院を退職すると打ち明けた俺を叱咤して、数日後に新都総合病院へと誘ってくれた

今では、孫が5人もいると言っていたように、当時と比べると見た目も中身も大分丸くなったらしい。


そんなことをぼんやりと思いながら、院内の廊下を歩く。
スタッフや入院患者らしきパジャマ姿の人たちに小さく頭を下げながら歩くと、彼らの好奇に似た視線のせいで居心地が悪くて仕方なかった。

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