泥酔ドクター拾いました。
「藤代さん、大丈夫?」

停められた車の運転席から颯爽と傘を差し、こちらに走り寄ってきた見覚えのあるシルエットは、私の鼓動を一気に加速させていく。

「大和田先生、どうして?」

「どうしてって……。とにかく、乗って。送るから」

一瞬、言い淀んだようにも見えた大和田先生だったのだけど、先生はそんなことどうでもいいと言うかのようにして、送ると言い始めた。

私の答えなんて聞く気はないんだろう、先生は私の横を通り過ぎると近くに停めていた自転車を運び始める。

「えっ?」

この自転車も運ぶの?そう聞きたかったことなんて分かりきっていたのだろう。
「この自転車ないと、困るんだろ?」

先生は私の横を通り過ぎ、急いで車の後部座席を倒し、トランクに乗せた。
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