泥酔ドクター拾いました。
「あのさ、俺、藤代さんのこと……」

マンションの駐輪場で見つめあったままだった私たちを沈黙の時間が流れていたのだけれど。
沈黙を破ったのは、大和田先生の方だった。


「……クシュンッッ」

きっと大和田先生は、大事な話を打ち明けようとしていたんだと思う。真っすぐに見つめて、大きく息を吐いて、喋り始めたのだから。


それなのに、大事なところで私はくしゃみをしてしまった。

「大丈夫?」
一瞬、呆気に取られたような表情を見せた先生だったけれど、心配そうに私の顔を覗き込んできたものだから、私は恥ずかしくなってしまって思わず顔をそむけてしまう。


「大丈夫です!!ちょっと、雨のせいで身体が冷えてしまっただけで、ク、クシュン」

強がって言った言葉は、またもやクシャミによって遮られてしまった。
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