*ΒaD boY,SaD girL*
[Pierced]
玄関を出た後、里沙を探したが、やっぱり校舎にも外にもどこにも里沙は残っていなかった。
〔今日うちあげ来るつってたしな〕
哉未は、しょうがなくそのまま帰る事にした。

「哉未くん…」

校門を抜けようとした時、校門わきに女子生徒が立っていた。
ふわふわパーマの見覚えのある・・・『奈々子ちゃん』
哉未は驚いた顔をして立ち止まる。
そこには懐かしい顔があった。

「そ、卒業おめでとうございます」

奈々子は少し控え目に言う。
哉未は「ありがとう」と微笑んでみせた。

「最後に・・・最後だから話がしたくて」

『話?』

あんなヒドイ事をしたからか哉未は先日のできごとを思い出し思わず顔が強張る。

『奈々子ちゃん・・・ごめんな。あん時、俺イライラしてて、あんな言い方・・・』

奈々子が話す前に口を開いた。
今にも泣きそうな奈々子を見て罪悪感を感じずにはいられなかった。

「違うの!なな・・・哉未くんのネクタイほしくって・・・」

『あぁ・・・』

奈々子の言葉に少しホッとした表情を浮かべる。

『そっか・・・でも』

しかし哉未の制服にはネクタイは、もうなかった。
違う子にあげた・・・というか取られた。・・・ブレザーのボタンも校章も
奈々子は何も言わなかったが残念そうにしているのが見て分かる。

『奈々子ちゃん』

哉未は何を思ったか耳に手を持っていく。

『・・・』

右耳にあいた2つのうち一つのピアスをはずす。

『はい。』

「え?」

キョトンとした表情を浮かべる奈々子と眉をハの字にしてほほ笑む哉未。

『こんなもんしかないけど・・・最後まで中途半端なことしてゴメン・・・』

奈々子は哉未からピアスを受け取ると握り締めたまま首を横にふる。
そして泣き出した。

「ぐすっ・・・哉未くんっ・・・好きでした・・・ほんとに・・・」

『・・・ありがとう』

奈々子の言葉に哉未は彼女の頭を撫で微笑んだ。


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