*ΒaD boY,SaD girL*
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里沙は哉未からの視線をそらしたまま
哉未は里沙の腕を掴んだまま視線を落とした

『あたし』

里沙が口を開く

『今すごい幸せなの。だから哉未も幸せになってね』

表情は分からないが里沙の声は優しく明るく感じる。
本心かどうかは分からないがその言葉が哉未へ、どれほどのダメージをあたえるか里沙は気がついているだろうか。

里沙には自分の知らない3年がある。

この感情が嫉妬だと確信しながらも里沙の事を考えると何もいえなかった。

『うん・・・・』

哉未は里沙の腕を掴んだまま頷く。

『式はじまっちゃう・・・手・・・・離して』

里沙が呟いた。

『あぁ・・・悪い』

力なく手を離す・・・

里沙の腕を離すと哉未の手は少し汗ばんでいた。
哉未は少ししめっている自分の手の平を見ている。

やっぱりこのまま終わってしまうのか

自分の気持ちに嘘をついて

でも、しょうがないよな

俺が里沙にした事は償っても謝っても許されない事だから

『・・・・』

“3年たったんだ。もう自分を許してやってもいいんじゃね?”

ふと思い出した宇田の言葉。
哉未は思わず眉間に皺を寄せた。〔許せない・・・許せるはずないだろ・・・〕

でも・・・『里沙』

哉未が口を開くと中へ入ろうとしていた里沙は立ち止まった。

『俺、里沙が好きだよ』

言葉にしたいと思った。
たとえ許されなくても、もう後悔はしたくないと思った

『何いってんの・・・』

里沙は振り向くとぎこちなく笑う・・・そんな里沙を哉未は真剣な表情で見つめた。


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