*ΒaD boY,SaD girL*
[happy...?]
あまりにも真剣な哉未の表情に里沙は眉間に深く皺を寄せた。

『何いってんの?』

里沙の声色は、さっきとうって代わり明らかに怒りをおびていた。

『何でっそんな事いうの』

里沙は哉未を睨むように見ると静かに言った。
哉未は眉ひとつ動かさず里沙を見つめた。

『里沙に男いたっていいよ。二人の仲をどうこうしたいわけじゃない・・・』

哉未は一瞬、困った表情を浮かべて言葉を続けた。

『ただ伝えたかっただけだから』

その言葉に里沙の表情は更に険しくなった。

『バカじゃないの!?何かっこつけてんの?』

人通りは、さほどなかったが里沙の声は段々と大きくなっていく。

『里沙』

哉未が触れようとすると里沙は、その手を払いのけた。

『あんな別れ方したから同情と好きを取り違ってるんでしょ』

『それはないよ。』

あまりにもハッキリと断言する哉未に一瞬口ごもるが里沙はまた口をひらいた。

『ムカつく!』

里沙は顔を真っ赤にし怒りを露わにする

『うん。わかってる』

哉未の動じない様子に里沙は苛立ちを隠せないでいる。

『あたしがっ!あたしがあの時どんな気持ちでっっ』

里沙は体をふるふると震わせ唇を噛んでいた。

『里沙・・・』

里沙の言葉に何とも言えず自分のしてきた事に対し胸が痛む・・・

『哉未が・・・あたしのせいで幸せになれなかったらって・・・』

『あたしがいたら哉未は幸せになれないからって・・・』

里沙は眉を八の字にし、さっきとは反対に弱々しく呟いた。
今にも泣き出しそうな里沙・・・こんな里沙を見たのはあの時以来だった。

『里沙・・・』

これが最後のチャンスだと思うと自然と手に力が入る。

『里沙がいない今は全然、幸せなんかじゃない。里沙がいない未来の俺は幸せなんかじゃない』

哉未は一つ一つをゆっくりと言葉にする。

里沙は聞きたくないというように首を横に降る。

『これが“卒業式の日”の答えだよ。』

耳を細い手で覆って俯いていた里沙が、ゆっくりと顔を上げ哉未を見る。
眉を寄せ悲しげな表情の哉未。

『ごめん』

静かに呟く哉未・・・『好きでゴメン』

< 82 / 85 >

この作品をシェア

pagetop