*ΒaD boY,SaD girL*
[kiss of an oath]
「・・・誓いますか?」

「・・・はい」

小太りの神父さんの言葉に返事をする花嫁・・・里沙と哉未の姿が見られないまま式は始まってしまった。

前の席で二人を祝福するように微笑む宇田。
それでも、たまに宇田と式最中の智貴、舞美でさえも入口の方を気にしている素振りを見せた。

「哉未・・・里沙と何かあったのかな?」

指輪を交換しながら舞美と向き合いボソリと呟く智貴。

「ん・・・」

舞美は眉を寄せ心配そうな顔をする。

「二人とも素直になれればいいんだけどね・・・」

「里沙は・・・彼氏とか・・・」

不安そうな表情を浮かべる智貴
その言葉に舞美が眉を寄せたまま微笑む

「3年間・・・1度も作らなかったよ・・・里沙は・・・」

そう言うと智貴は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。

「遠回りしすぎだな・・・あの二人」

そう言い智貴は舞美の白のベールをめくった。







涙を流す里沙に哉未は触れようとしてビクッと途中で気がついたように手を止めた。

『・・・触っていい?』控えめに聞く。

そんな哉未がおかしく思えて思わず泣きながら笑みを浮かべた里沙。

ぐいっ

哉未は里沙の手をとると自分の胸に抱き寄せた。
抱き締めた里沙の体は昔と同じ香水の匂いがした。

『哉未っ・・・』

里沙の呼び掛けに答えるように哉未は里沙をギュッと強く抱き締める。
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