青空の下で

自転車置き場に自転車を停めて校舎の中へと入る。



美術室の扉を開けると、そこには誰もいない。



ガランと静まりかえった教室の中に私の足音が響く。



いつもの席に座り、グランドに目をやるとサッカー部が練習している。



必死でボールを追いかける姿に目を奪われる。



どれくらいこうしていたのかわからない。



ただ、太陽が照り付けるグランドに胸を弾ませながら、汗が光る背中を目で追っていた。



きっと何時間だって見ていられる。



夢に向かっている人たち。



夢の中にいる人たち。



そんな彼らは私には眩しくて仕方なかった。



グラウンドの様子を見れば見るほど、昔のことを思い出して涙が出そうになる。



でも、視線を逸らすことが出来なくて、涙がこぼれ落ちそうになった時、ガラガラと美術室のドアが開いた。



振り向くとそこには岬君が立っている。



「あっ、おはよう」



「何してんの?」



「展覧会近いから、さっちゃんいるかなと思ったんだけど、いなかった」



「そう」



「岬君はどうしてここに?」



「原田らしき人が見えたから……泣いてる気がして」



「えっ?」



「違うならいいんだ」



グラウンドからこの教室が見えたとしたって、涙を確認できるような距離ではない。



それなのに……



どうして岬君には私の涙が確認できたのだろう?



「あの……昨日は……」



昨日のこと謝りたくて話しかけたのに、行っちゃった……



聞こえていたはず。



岬君の耳に私の声は届いていたはず。



それなのに、岬君は行ってしまった。



無視されたことが悲しかった。



イチゴ飴を渡したときのような、笑顔はもう見せてくれないんだと思うと辛かった。



今まで辛い事は色々とあったけど、私の涙は流れなかった。



それなのに、どうしてこんなことでこんなにも涙が止まらないんだろう。



もう一度、話がしたい。



生き生きとした瞳で話す岬君の顔をもう一度みたい。



私の失った物、沢山持っている岬君と、もっともっと話したかったのに……

< 38 / 88 >

この作品をシェア

pagetop