オリオン

「オリオンという一人の男がいました」



シンの声を聞いているだけで、体中の体温が上がっていくのがわかる。



私はシンの腕に自分の腕を絡めて話を聞いた。



「オリオンは、女神のように綺麗なミンティスと一緒に暮らしていました。しかし、ミンティスの両親は2人の関係に猛反対でした。ある日、オリオンが頭だけを水の上に出して海を歩いているのを見つけた父親は、ミンティスにそれを指し示して、本当におまえがオリオンを愛しているなら、あの海に浮かんでいる黒い物を射ることくらいできるだろうと言いました」



「なんで頭だけを水の上に出して海を歩いているんだよ」



「それは、俺にもわからねーな。話し続けていいか?」



「あっ、ごめん」




「ミンティスは弓を触ったこともなかったのですが、見事に命中してしまったのです。それがオリオンだとも知らずに。やがてオリオンの死体が海岸に打ち上げられ、悲しんだミンティスの想いの強さでオリオンを星座に上げたといいます」



なんでこの話が好きなのか、この時はわからなかったけどシンの声で語られていると素敵な話に思えたよ。

< 30 / 52 >

この作品をシェア

pagetop