カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない
 
 
そんなある日。

モニカが書斎で本に夢中になっていると、ふと視線を感じた。顔を上げてみると、リュディガーがこちらをじっと見ている。

目が合っても視線を外さないので不思議に思っていると、彼はモニカを見たまま自分の側頭部を指で示した。

「髪のリボンが取れかかっているぞ」

言われてモニカが頭に手をやると、編み込んだ髪を結んでいたリボンがほどけて手にしなだれ落ちてきた。

「いけない、ほどけちゃった」

乱れかけた髪を慌てて整える。しかしいつもは侍女がやってくれているので、ひとりでは難しい。

「すみません、リュディガー殿下。この押さえている髪にリボンを結んでもらえませんか?」

少し前の彼女だったら、とても皇太子殿下にこんなことは頼めなかっただろう。けれど随分と距離が縮んだ今なら、これぐらいのお願いも聞いてもらえそうだと思った。

ところが、モニカが椅子から立ち上がって、リボンを結びやすいようにとリュディガーに背を向けても彼が動く気配がない。

両手で押さえた編み込みのハーフアップが崩れないようにそっと振り返ると、ようやくリュディガーはモニカが肩に乗せていたリボンを手に取った。

静かな書斎に、リボンを結ぶ衣擦れの音が微かにする。やがて髪がきゅっと結ばれた感触がしたのでモニカは手を離し、後ろを振り向いた。

「ありがとうございます、殿下」

けれどリュディガーはとても渋い表情をしている。こんな雑務をさせてしまったことを怒っているのだろうかと思ったが、どうやら違うようだ。
 
< 23 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop