カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない
切れ長の瞳を柔らかに細めて言った彼の姿に、モニカは涙が出そうなほど胸が苦しくなる。そしてようやく気がつく、自分が初めての恋をしていたことに。
ふと切なげな表情を浮かべてしまったモニカに、リュディガーが目をしばたたかせた。
「どうした?」
「いいえ、あの……」
慌てて頭を横に振ったモニカは、はにかんだ笑みを浮かべて彼を見つめる。
「う、嬉しいなって思ったんです。また殿下にリボンを結んでもらえるだなんて、光栄だなって」
けれどその言葉に、今度はリュディガーのほうがなぜか口をつぐんでしまった。困っているような、なにか悩んでいるような表情を浮かべている。そして。
「……俺を”ルディ“と呼ぶのは嫌か?」
そんな不思議なことを聞いてきた。
「……ル……?」
「ルディだ。子供の頃はそう呼ばれていた。今はその愛称で呼ぶものはいないけれど、親しいものになら呼ばれても構わないと思っている」
それは、どういう意味だろうか。
生まれて初めての恋に気づいたばかりの少女は、すぐにはその意味がわからない。
今は誰も呼んでいない愛称を、自分にだけ使うことを許してくれた。いや、呼ばれたいと乞われた。
うぶな胸がドキドキと早鐘を打ち、耳まで真っ赤に染まっていく。
赤い顔をして固まってしまったモニカを見て、リュディガーも頬を微かに染めると、「嫌ならいいんだ。忘れてくれ」と慌てて背を向けた。
しかし、モニカはびっしょりと汗を掻いてしまった手を硬く握りしめると、勇気を出してその背に呼び掛ける。
「ル……ルディ……」
しばらくの沈黙の後、振り返って「なんだ」と答えたリュディガーの声はかすれ気味で、顔は彼にしては珍しいほど赤く染まっていた。