カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない
うっかりすると涙がこぼれてしまいそうで、モニカは唇をきつく噛みしめ俯くことしかできない。
すると、木漏れ日の差すリンデンバウムの下でリュディガーが足を止め、「モニカ」と呼びかけてきた。
「なぁに? ルディ」
泣いてしまわないように必死に笑顔を作りながら顔を上げる。リュディガーはそんなモニカをじっと見つめていた。
「きみに礼が言いたい。この休暇はとても楽しかった。……ありがとう」
真摯な眼差しと少しだけ照れた声色で紡がれたその言葉を聞いて、モニカの瞳がみるみる潤んでいく。
ついに涙がひと筋頬を伝って落ちていくと、リュディガーは一瞬戸惑った顔を見せたが、そっと手を伸ばし濡れた頬をぬぐってくれた。
モニカが少し落ち着くのを待ってから、リュディガーは再び言葉を紡ぐ。
「……ここに来たばかりのとき、俺はひどく苛立っていたんだ。次期皇帝として憂うことばかりで、休暇を楽しむ余裕もなかった。きみたちに八つ当たりをして怒鳴ってしまったこともあったな、悪かったと思っている。……けれど、モニカと共に過ごすようになってからは、本当に毎日が楽しかった。あれだけ曇っていた心が軽くなって……今までで一番楽しかった休暇かもしれない」
ゆっくりと言い含めるように話す彼の言葉に、モニカも鼻をすすり上げながら頷いた。
「私も……ルディと一緒の時間が一番楽しかった。一緒にお茶を飲むのも、散歩をするのも、ルディとするのが一番好き。もっともっとあなたと過ごせたらいいのに……」
わがままを言ったら困らせてしまうとわかっているけれども、モニカは口に出さずにはいられなかった。次期皇帝という立場の彼に恋をしてしまった自分の心が恨めしかった。