カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない
シュゲル城から自国へ帰る馬車の中で、モニカはずっと幸せな心地に酔いしれていた。
手にはリュディガーからもらったブローチをそっと包み込んでいる。
(ルディの妻になるため、立派な淑女にならなくっちゃ。しっかり勉強をして、花嫁修業もして……そうだ、お母様にお願いして多国語の家庭教師もつけてもらおう)
五年後を夢見るモニカの胸は弾んでいる。大帝国の皇帝に相応しい花嫁になるために、学びたいことは数限りない。
不安定な情勢の中、リュディガーが戴冠式を控えていることを考えると、今は婚約を公にはできない。あくまでふたりきりで交わした秘密の約束だ。
けれど誠実で厳格なリュディガーが約束を反故することは考えられなかった。誰にも言えなくてもモニカは心から彼を信じ、花嫁になる日を真摯に信じる。
この夏、共に過ごした幸福を忘れなければ、通じ合った想いを互いが忘れなければ、たとえ五年という月日が流れようとも約束は揺るぎないものであるはずだった。
しかし――。