オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
その目に見入っていると、不意に向居が私を見下ろした。
突然の視線に、どきりとしたまま私は目が離せなくなった。
影のある瞳の奥には、私になにかを吐露するかのように、鈍い光が潜んでいるように見えた。
でも、そう感じたのは一瞬のこと。
私から視線をはずすと、向居は白い歯を見せてからりと笑った。


「東京の桜なんて常に人がまとわりついていて落ち着いて見れるもんじゃないだろ。いつも花見を遠目で見ては『ただでさえ人でごみごみしているのに余計うっとおしい』くらいにしか思わなかったな」

「うわーさめてるなー」

「東京生まれだって人混みが嫌いな奴はいるだろ。だからこそ、俺は都会の日常から脱出できる旅行が好きなんだ」


ふーんなるほど。
向居の企画が常に王道路線から外れた奇抜なものが多いのはそのためなのか。
今朝のことや、この城址公園に来るまでの行動がいい例だ。
どこまでも人混みを避けるスタンス。それが人間関係にしばられ日常生活に疲れた現代人にウケて向居の企画の人気につながっているんだ。


「でもそんなに嫌なものかしらね。人が多いところも楽しいじゃない。観光地に来たんだー! って感じがするし、活気があってみんな楽しそうで、見ているこっちもワクワクしてくるじゃない」

「ワクワクね」

「そうそう。特に今頃の時期は新しいことづくしで自分だけじゃなく周りのみんなが浮足立っているっていうか。…ほら、あの子たちとか、すごく楽しそうじゃない?」
< 106 / 273 >

この作品をシェア

pagetop