オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
ふぅん、と否定したいのか納得しているのか判別がつかない返答をすると、向居は桜に視線をやって黙々と登り続けた。
その横顔は、整っている分まるで武装しているかのように謎めいていた。

そう、向居は謎めいている。
私には見透かすような眼差しを向けるくせに、自分に関しては、なにか胸の内に潜めているものをひた隠すように謎めいたヴェールをまとって、私に接してくる。
そしてそれを誤解して、私は勝手に向居を憎んでいた。

今朝はその誤解を解くことができて良かったと思う。
だって憎むことはエネルギーを使う。誰かを憎みながら毎日仕事するなんて、エネルギーの無駄遣いだもの。

この旅行が終われば、向居は大嫌いなライバルから純粋な良きライバルに変わっているかもしれない。
そして私も、もっと仕事に張り合いを感じるかもしれない。

そうだ。
これからはそうやって今よりももっと仕事に集中すればいい。
基樹と別れて陥る『独り』なんて、忘れるくらいに。

軽く息を吐いて、胸で続いていた疼痛を誤魔化した。
基樹とは終わった。だからなんだってのよ。ぐちぐちなんかしたくない。めそめそなんてしていられない。帰ったらまずはこの旅行企画に全力投球するんだ。そして今度こそ、向居を負かしてやる。

私は今までずっと頑張ってきた。
彼氏と別れたくらいで、立ち止まりたくなんかないの。
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