オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
などと話していると、前方から中高年の団体客がやって来るのが見えた。

私たち二人が並んですれ違うほど道幅に余裕はないのだけれど、皆様会話に夢中で、私たちのために道端に寄ろうというそぶりを見せない。
向居は左端に行こうとする。私は離れて右端に行こうとした―――が、急に向居に手を握られ、すこし強引なくらい強く引き寄せられた。

そのまま向居がずいずい進んでいくと、おばさま方が気づいて端に詰めてくれた。
「あらいい男」なんて声を掛けられながら、向居は私の手を強く握って黙々と歩いていく。
私たち、きっと今、どっからどう見ても恋人同士に見えているんだろうなぁ。


「過去形で話すんだな」

「え」


不意に、前を歩いている向居が振り向きもせず言った。


「今ののろけ話、まるで昔話を懐かしむみたいだったな」

「…え、そうだった??」


そんな話には聞こえないようにしてたつもりだったんだけどな…。


「実はもう別れている、とか?」

「…え…! べつにそういうわけじゃ…! なんでそうなるかなー」


切れ味抜群の鋭い指摘にドキマギしつつ、なるべくわざとらしくならないように、明るい声で返した。
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