オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「ふん。代金は払うとはいえ、棚ぼたで人気旅館に宿泊できるんだから、せいぜい私に感謝しなさいよね」


と腹立ちまぎれにそっぽを向くと、不意に向居の気配が動くのを感じた。
かと思うと、腰にすかさず手がまわり、抱き寄せられ、向居が私の耳元に唇を近づけた。


「ありがとう、都。今夜はゆっくり楽しもうな」


思わず鳥肌が…。
低くてそれでいてやさしい、いい声。
しかもこんな言葉、基樹にだって言われたためしがない。
鳥肌がたつとともに身体もかぁあと熱くなって、さっそく彼氏面してくる図々しさにつっこむタイミングを逃す。


「早く、行くわよ」


逃げるように向居から離れ、私は先にすたすたと歩きだした。
周囲のこの暗さだけれども、近くに寄られたら顔が赤くなっていることに気づかれてしまうかも…。


「待てよ、都」

「は…なに?」

「手」

「て?」


思考が追い付かない私にずいずいと近づくと、向居が手を握ってきた。
逃がさないとのばかりの強い力に、私の心臓も握られたように痛んだ。
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