オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
引っ張られるように連れていかれると、都内ではめったに目にかけなくなったおもちゃのように小さいバス停があった。
傾いた立棒も申し訳程度についた丸い看板も錆びだらけなんだけど、その古臭い感じが妙にこの街並みに合っていた。

「間に合ったな」と時刻表をながめる向居。
すると、その肩越しからこれまた古めかしい…いや、年季の入ったデザインのバスがゆっくり近付いてきた。


「すごい。昭和の時代から使ってます、って感じのバスね」

「これがまたいいんだよなぁ」


と、キィと停止音まで見かけどおりのバスに、嬉々として乗り込む向居。
なんかキャラが違うぞ。


休日の早い時間というだけあって、バス内は閑散としている。
酸化しはじめた鉄のポールに渋い緑色の座席と、昭和感全開の内装も裏切ることがない。

さっさと窓際に座る向居だったが、この車内ではその目立つ容貌が浮きすぎていて、見ている私は思わず口元をゆるめてしまう。THE日本一路線バスが似合わない男、じゃないの。
なんて思いながら、おずおずと向居の隣に座る。
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