オプションは偽装交際！～大キライ同期とラブ・トラベル！？～

バスがゆっくりと発進した。
ぶぉーんというエンジン音とともにグワングワンと揺れ始める車内。

急に懐かしさが込み上げてきた。
路線バスに乗るなんて、何年ぶりだろう？

まだ暖房がつけられている車内は、暖かくて心地よかった。
週末の早朝というだけあって乗客は少なく、朝日に満ちた車内はどこか清々しい。

こんなに早くからどこに行くのかな、ってお年寄り。
部活かな？　って男子学生さんや、ほかほかした車内の温かさでウトウトしている制服姿の女子高生。

そういえば、すっかり忘れていたけど、私、高校生の頃はバス通学をしていたんだったな。
部活の朝練でよく早朝からバスに乗っていたっけ。バスに乗るとどうしても眠くなるんだよね。懐かしい。


窓の外では、商店、薬局、金物店、クリーニング店など何十年も続いていそうな専門店、コンビニや今どきのカフェ、そして普通の一軒家などなど雑然とした町並みがランダムに流れ、そこに時折、歴史を感じさせる木造の建物やお寺などが通り過ぎていく。

観光地化した地方都市らしい町並みだ。
歴史と化したものと、一昔前のもの、そして現代の日常。
この街の何世紀にもわたる変遷そのものが、この小さな街に混ざりあうことなくまとめられ、ぎゅっと詰められている。
最先端の更新ばかりを繰り返す都会生活に慣れ切った私の目には、それがとても新鮮に映る。