ハロー、カムアロングウィズミー!

「対談しながら、一局どうですか?」

再び向き合うと同時に投げかけられた言葉に、驚くと同時に戸惑った。

「まさか、プロ棋士にお手合わせいただけるとは思いませんでした」
「そんな大したものではありません。慣れない状況よりは緊張せずに済むかと。お付き合いいただけると助かります」
「ハンデをいただいてもよろしいですか?」
「はい。まあ、対談しながらという点が最大のハンデかも知れませんが」

確かに、話術においてはおそらく俺の方に分があるだろう。しかし、それを差し引いても一流棋士相手とまともに戦って勝負になるはずもない。
予め頼んであったのか、すぐに用意された将棋盤に、有坂の駒が六枚少ない状態で並べられる。
あとは、会話の中でどれだけ相手を動揺させられるのかに掛かっているのだろう。なかなか面白い勝負だ。

「正直なところ、対談相手に高柳さんを指名した理由はこれだったんです」

やや気まずそうに微笑みながら、目の前の将棋盤に視線を落とす。
なんだ、そういうことか。抱えていた謎がいとも簡単に解けた。

「私が趣味で将棋を指すことをご存じだったのですね」
「それは師匠から教えてもらいまして。対談なんてどうしたらいいのかまるで分からないし、断るにも断れなくて。困って師匠に相談したら、あなたと一局交えてきたらどうかと」
「なるほど、なかなか面白いアイデアですね」

笑いながら、先手を打つ。
これもハンデの一つだ。
それを見て、有坂は迷いなく自陣の駒に手を伸ばした。同時に、パチリといい音が離れの一室に響いた。

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