空に虹を描くまで


「はい!」

驚いてぱっと顔をあげた。


「ばれずに教室に入ったつもりだろうが、バレバレだぞ」

ニヤニヤと笑いながら言った。


「えー!?す、すみません」

ほんと、こういう時に限ってチャイムが鳴る前に先生が教室にいたりする。
普段は少し遅れてくるような先生なのに。

「じゃあ、罰としてこの問題解いてもらおうかなー?」

教科書を開き宿題に出ていた問題を黒板に書きだした。


わたし以外に3人が当てられ、黒板の前に呼び出された。

宿題で書いてあった答えをそのまま書き写しチョークを置いた。



「上出来」

赤いチョークで丸をつけると、わたしたちをもとの席に返した。

たまたま昨日学校の休み時間中に宿題を終わらせて家で見直しをしていたから、正解の自信があった。

もともと遅刻したってだけで注目されているのに、間違っていたらさらに恥ずかしい。

当てられたのが今日で良かった、と一息ついた。



そういえば、さっきノートを渡してくれたあの男の子は授業に間に合ったんだろうか?

わたしは移動だったから少し遅れたけど、クラスに戻るだけなら大丈夫…なはず。

わたしみたいな目にあっていたら可哀想だな。

でもあの人、わたしみたいに慌てている様子はなかったし、きっと大丈夫だろう。

そんな確信のない根拠を思い浮かべて、自分に言い聞かせていた。





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