【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
担がれている男性はとてもぐったりしていて、身じろぎひとつしない。
その様子を見てシルディーヌは、ある光景を思い出していた。
アルフレッドが素手で粉々にしたという室内鍛練場の硬い壁。
あの凄まじい腕力で思い切り殴られたら、生身の人間は気絶どころじゃすまないかもしれない。
そして、シルディーヌ自身も、剣を向けられたり強く抱きしめられたり、何度か命の危機を感じたことがあった。
ぐったりしているあの男性は……いや、しかし、まさか……。
息をのんで見つめているシルディーヌのところに戻ったアルフレッドは、樽のように太った男性を担いできたのに息ひとつ乱れていない。
これは、さすが鬼神の騎士団長と言うべきことだろうか……。
だが今は、そんなことに感心している場合ではない。
シルディーヌはおずおずと訊ねた。
「あ、あの?アルフ?訊いてもいいかしら?」
「なんだ、いちいち前置くな。訊きたいことがあるなら、さっさと訊け」
「そ、その人に、なにをしたの??」
生きてるの?の言葉は、口にするのも怖くて止めておいた。
「ああ、捕まえて投げ飛ばしたあと、胸ぐらをつかんで、少しばかり説教をしただけだ」
アルフレッドは淡々と答えると、シルディーヌの前の地面に担いでいた男性をどさりと下ろした。