【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「ほら、行くぞ」
「アルフ、紅茶代を……」
差し出された手を取りながらおずおずと尋ねるシルディーヌを、アルフレッドはジロッと睨む。
視線だけで黙らされてしまい、どうやら買ってくれたのだと悟った。
「ありがとう」
「礼を言うな。紅茶くらい、大したことじゃない」
荷物を持ち、シルディーヌの腰を引き寄せて歩くアルフレッドは紳士的で、黒龍殿でのワイバーンぶりとは大きな隔たりを感じる。
そしてその後も「まったく、ここだけで日が暮れるぞ」と渋い顔でぼやきながらも、アルフレッドはシルディーヌの買い物に付き合ってくれた。
雨傘と雑貨、ほしいものを手に入れてホクホク顔のシルディーヌは、アルフレッドに向き直った。
「ありがとうアルフ。今日はとても楽しかったわ」
「満足したな? ならば、今からは、俺に付き合ってもらうぞ」
「……え? 今から??」
商店街にいた時間が長く、もう日が傾きかけてきている。
用があるのなら、もっと早く言ってくれればよかったのに。
シルディーヌがそう言うと、アルフレッドは首を横に振った。
「今からの方が、都合がいい。多分、丁度いいくらいだな」
アルフレッドは謎めいたことを言い、商店街の入り口近くにある広場へとシルディーヌを誘った。