【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「だから、この際シルディーヌでいいなぁって思ってさ。ママも王都に来てるけど、疲れたからって宿にいるんだ。今から会わせてやるから来いよ。王太子と踊るような女なんだ、喜ぶぞぉ。ママの疲れなんか吹き飛ぶぞぉ」
カーネルがますますうれしそうにウシシシシと笑うから、シルディーヌはサーッと青ざめた。
相変わらず、気遣うのはママばかりの男だ。
もしも宿に連れていかれて“ママ”に会わせられたら、婚約話が勝手に進んでいきそう。そうなったら最悪だ。
「わ、私でいいって、なんなの、それ! 勝手に決めないで!」
シルディーヌは全身がガクガクと震えてしまい、足が動かしづらいが必死に壁伝いに逃げる。
「勝手にって、困った言い草だなぁ。カーネル家の方が、シルディーヌの家より格上なんだ。僕が決めれば断れないだろう? いいから、来いよぉ」
カーネルに腕を取られそうになり、シルディーヌは咄嗟に身を屈めて避け、お腹と腕の間をすり抜けた。
ところが、ドレスの裾がピンと張ってそれ以上動けず、勢い余ったシルディーヌはべちゃっと派手な音を立てて転んでしまった。
「イタタタタ、どうして動けないの?」
起きざまに振り向いてみると、なんとカーネルがドレスの裾を踏んでいた。
そして、シルディーヌの腕をむんずと掴むと、引きずるようにして大広間の外へと連れいていく。