【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
カーネルはウシシシシと笑い、自慢げに胸を張る。
「そ、そうなの。それはすごいわね……」
田舎とはいえ、カーネルも貴族の中では上流の家柄だった。
けれど、なんて趣味の悪い色の衣装なんだろうか。
遠目では黄色に見えたが、タキシードはぴかぴかのゴールド色だった。
これでは気味悪がって、ご令嬢方は誰も相手にしないだろう。
「シルディーヌ~、しばらく見ないうちに、垢ぬけたじゃないかぁ。今は、王太子殿下にダンスに誘われるいい女なんだなぁ」
「見てたの? というか、これ以上近寄らないでほしいわ」
「なに言ってるんだよぉ。婚約話が持ち上がってる仲だろう?」
「そんなの、私は承知していないわ!」
「でも、僕さぁ、ママにお嫁さん連れてきてって、言われてるんだよねぇ。舞踏会で綺麗な子見つけろって、すごくうるさくてさぁ」
ウシシシシと笑いながら、ギラギラと脂ぎった顔でシルディーヌに迫って来る。
「い、言われているから、どうだって言うの!」
シルディーヌは嫌な予感と悪寒がして一目散に逃げたいが、大きな柱と壁が邪魔をする。
人を呼びたくても声の届きそうな位置には誰もおらず、王宮警備隊員の姿が遠くにひとり見えるだけ。
みんな宮廷楽団の奏でる音楽とダンスとおしゃべりに夢中で、隅の方など気にも留めない。
落ち込んでいたとはいえ、こんな人気のないところに来るべきじゃなかったのだ。