【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


「シ、シルディーヌさん!?」


一瞬ぎょっとしたフリードはすぐに気を取り直し、慌てて駆け寄ってくる。


「待て! アクトラス! どこへ連れて行く気だ。その人は、団長のものだぞ!!」

「へ!?」

「なに!?」


シルディーヌの間抜けな声とアクトラスの声が重なった。

アクトラスはぴたりと止まって、素っ頓狂な声を上げる。


「団長のものって。副団長、マジですか!?」

「ああ、だから下せ。今すぐ下せ。さっさと下せ」


フリードは早口で三回も下せと言い、アクトラスに“お前は大変なことをしているんだぞ”と伝えている。

そのおかげか、シルディーヌは壊れ物を扱うがごとくそっと下ろされた。

そしてアクトラスは、ビシッと敬礼をする。


「なにも知らなかったとはいえ、大変失礼しました! 大事なお方を犯罪者扱いしたこと、許してください!」


そのクマのような大きな体をシルディーヌは見上げる。

顔色は青くて口を真一文字にしており、額には汗が滲んでいるよう。

こんなクマのように強そうな騎士が、おびえたうさぎのような瞳をしているとは。

やっぱりアルフレッドは、とても怖い存在なのだと分かる。


だが、“団長のもの”とか“大事なお方”とか。

どうしてそんなふうに思われているのか不思議でならない。

大事なお方に『アマガエルに似ている』などと暴言を吐く男性がどこにいるだろう。

誤解はしっかり解いておかねば。


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