【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
叫ぶ間もなく大きな手のひらで口がふさがれてしまい、がっしりとした腕に体を拘束されて身動きひとつとれない。
その万力のような力の持ち主の声が頭の上から降って来た。
「侍女がここでなにをやってる。立ち入り禁止だぞ。スパイか?」
「ひ、ひがひがふっ」
口だけでなく鼻までも塞がれていて、息苦しさに眩暈がする。
再び命の危機を感じ、シルディーヌは騎士であろう男の手の甲を爪でガリガリとひっかいた。
「イテテテテ! こいつ、抵抗するな!」
おかげで男の腕が緩んだので、シルディーヌは逃れようとしてバタバタと必死でもがく。
すると男の手に再び力が入り、あろうことか、よいせっと肩に担がれてしまった。
「よし、俺が尋問してやる。女は久しぶりだ。たっぷり、時間をかけるかな」
「は!? ちょっ……離して! 違うの!」
男はやけにうれしそうな感じで、シルディーヌはパニックになり、まともに反論できない。
「待って、ってば」
手足をばたつかせると、ますます拘束が強くなる。
食堂の扉がどんどん遠ざかっていき、助けを求めようにも、担がれているおかげでお腹が圧迫されており上手く声が出ない。
尋問って、どの部屋でするのか。
フリードはすぐに居場所を突き止めてくれるのか。
焦っていると食堂の扉が開き始め、フリードが姿を現した。
その全身真っ黒い姿がやけに神々しく見える。
「フリードさんっ、助けてっ」