【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
そして今日一日黒龍殿での謹慎を命じられたのだそう。
シルディーヌが黒龍殿に来るなり『今日はシルディーヌさんの手伝いをします!』と宣言し、朝から行動を共にしている。
今いる使用人休憩室は長年使っていなかったために汚れていたが、午前中いっぱいをかけてアクトラスと一緒に清掃をし、快適空間に生まれ変わったのだった。
「メロメロだなんて、そんなことないわ。今朝のアルフの態度、アクトラスさんも見たでしょう?」
アルフレッドに義務付けられた朝の挨拶をするシルディーヌに『まあ、泣かないように、せいぜい頑張るんだな』と、皮肉たっぷりにのたまったのだ。
あれのどこが、デレデレメロメロなのか。
「ああそりゃあもう。ほかの女とは接し方が違いましたねえ」
アクトラスは何度も首を縦に振る。
そう言われてもピンとこなくて、シルディーヌは首を傾げる。
もしもそうならば、幼馴染みの気安さが出ているだけだと思う。
それに、シルディーヌのことを“団長の大事なお方”だと思い込んでいるアクトラスには、妙なフィルターがかかって見えているのかもしれない。
「それはそうと、シルディーヌさん、もう昼休みの時間が終わりますよ。団員たちも食事が終わっている頃だ」
アクトラスが壁の時計を差すので見れば、もう一時を回ろうとしていた。
「あ、本当! 大変だわ。そろそろ午後の仕事をしなくちゃ!」
シルディーヌは急いでパンを食べきり、食器を片付けるべく席を立った。