幼馴染は関係ない
13話
「時間だから、とりあえず行くぞ」
と竜生は私の手首を掴んだ。
力入りすぎ、痛いってば!
私は手を振り払う。
「やめてよ、乱暴なんだから」

そんなやりとりをしている私達に両親は、
「花音、竜生君に迷惑かけないようにね!
竜生君、頼んだわよ~」
「本当にいつまでも竜生君は花音のお兄さんみたいでありがたいな」
と声をかけてくる。
その言葉から竜生に対しての絶大な信頼が見て取れた。
竜生に迷惑かけていたのは何年前の事だと思っているの?
それに竜生は同い年なんだから兄って事はないでしょ!?

バスを待っている間、竜生はとても怒っている口調で、
「お前、だいぶ前に中元とは連絡取って無いって言ってただろ? 嘘だったのか!?」
と言った。
私は頷く。
「彼氏だってずっといないって・・・なのに中元と4年も付き合ってただぁ!?」
ギロリと睨まれる。
「だって、竜生が悪いんじゃない」
「はぁ!?俺?・・・あ、ああ、そっか」
と少し怒りが沈静化されたみたい。
自分の言動を思い出したのかな・・・。
私が新君から話しかけられる事を迷惑がっている。と言った事。
「竜生を信じられなかったから・・・」
また邪魔されるんじゃないかって怖かった。
「そうか・・・」
「うん」
「なぁ、俺、今 彼女いないって知ってるだろ?」
話変わり過ぎじゃない?
「それが?」
「なんでかって考えたことあるか?」
「え? ・・・考えたこと無いけど・・・」
興味も無いし・・・。
「そろそろ練習も終わりだな~って思った」
「練習!?」
今まで付き合ってきた女性は恋愛の練習相手だと思ってたの!? 本当に最低な男。
「好きな女が相手じゃないなら、その他の女は練習だって思ってきた」
「・・・竜生は彼女の事好きじゃなかったの?」
あんなに綺麗な子だ美人だと自慢していたのに?
「俺から好きだなんて言った相手はいない」
何その自慢話。 それだけ自分がモテますって言いたい訳でしょ?
「好きでも無い人と付き合うのは私は無理だな・・・あ、バス来た」
私はポツリと言い、バスに乗り込んだ。
「竜生? 乗らないの?」
「っ!? 乗る!」
ポカンとしていた竜生は慌ててバスに乗り込んできた。

約束のお店まで歩きながら竜生が、
「お前って中元を・・・好きなのか?」
と訊いてきたから、
「竜生ってバカなんだね?」
と私は笑った。
「好きでも無い人と付き合ったりするから、当たり前の事が分からなくなるんだよ?」
「当たり前の事?」
「好きだから付き合うの。 好きじゃなきゃ付き合おうとなんて思わないのが普通なの!」
私は竜生の顔にビシッと指をさして言った。
「中元を好きって事か・・・いつから好きだったんだ?」
「いつって、知ってるでしょ?」
「は? 俺が?」
私が新君を好きだって知ってバカにしたくせに!!!
「小学生の時からずっとだよ」
「は!? あの時からずっと!?」
心底驚いている表情の竜生。
「確かに中学は離れちゃったから、そういう気持ち忘れてたかもしれないけど・・・」
「なら、いつ再会したんだよ?」
イラついた口調で竜生は訊く。
「高校の担任が新君のお姉さんの旦那さんで・・・」
「なんだよそれ・・・なんで、その担任がお前と中元を引き合わせる訳?」
「新君が私の事をよく話してたって教えてもらった」
「中元が・・・お前の事を?」
「そうだったんだって・・・」
少し照れながら私は言った。
「嘘だろ!?」
「竜生が私と新君の始まりを邪魔しなかったら、私達もっと早く付き合ってたのかもしれない」
「・・・俺が邪魔したって知ってんだ?」
「知ってるよ・・・だから竜生に新君のこと言えなかったんじゃない」
「それで、俺がどうしてそんな事したか解ってんの?」
意地悪以外に何があるの?
私はキョトンとした顔で竜生を見つめた。

約束の店について、私はすぐに、
「ねぇ、みんな~ 小学で一緒だった中元新君 憶えてる?」
と話し始めた。
みんな、「憶えてるよ!」「人形みたいな綺麗な男の子でしょ?」とテンションが上がった。
「新君ね。 みんなに会いたいって言ってるの」
「え? 花音、新君と連絡取ってるの? 中学から別々だったのに?」
「うん。 新君、高2からお父さんの仕事の関係で北海道に行ってて、今も北海道なんだけど、明日来るって」
「会いたい!」
「どんなイケメンに成長してるんだろ?」
「じゃあ、明日もみんなで集まろうよ」
と私が提案してみんな賛成してくれた。

竜生はずっと考え込んだ様な顔のままで、とてもみんなと楽しく飲んでいるという雰囲気では無い。
そんなに私に彼氏がいたことが気に入らないの?
それとも、出来すぎな新君が相手だから?
私を今までバカにしてきたのに、それが出来ないってそんなに悔しい事なの?
「凄いな!」って褒めてくれてもいいんじゃない?
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