愛されることを受け入れましょう
視線を合わせられなくて、下を向いたままもそもそと言い訳をする私は、自分でも格好悪いと思う。

「大体さ、恋人でもないんだから。私の恋愛事情を樹くんは心配し過ぎだよ」

樹くんは心配してくれてるのに。これまでさんざん、相談にのってもらってたくせに。

でもさっきの女の人が樹くんの彼女なら、私はもぅこの暖かな手を手放さなきゃいけないから。ううん、あの人が彼女じゃなくても、手放さなきゃいけない。

理一君にも言った、離れる決心をするタイミングはきっと今なんだ。色んな事があった今夜、私は覚悟を決めるべきなんだ。

「ね、もう樹くんの部屋来るの、やめるね。いつまでも樹くんに甘えてたら私、成長出来ないと思うし。樹くんだって、素敵な人と出会った時に困ると思うし」

相変わらず視線は下げたまま、でもはっきりと言葉にする。ちゃんと逃げずに、泣かずに、ゆっくりと想いを伝える。

だって、樹くんに幸せになって欲しいから。

その時、横にいるのが私じゃない誰かなのは、ずっと分かってたことだから、悲しくなんてない。
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