奏でるものは~第1部~
時間になり、卒業生として、拍手の中、体育館に入場する。
体育館の舞台上には大きな花瓶に立派に生けてある花。
華やかな門出となるように、そんな配慮なのか。
「卒業証書授与される者――…3年2組――……」
次々と名前を呼ばれ、返事をする。
最後のクラスメイトの名前を呼び終わると
「代表、西田歌織」
担任に名前を呼ばれ返事をして舞台に向かう。
卒業証書はクラスの代表が、クラス全員の分を校長から受けとる。
クラスに外部進学者がいる場合その人が代表として卒業証書を受け取る。
だから私のクラスは私が代表である。
私は本当の卒業だから。
体育館、グランド、幼稚園園舎、小学、中等部の校舎、騒いだり歌ったり走ったり。
思い出が多すぎて、目の奥が熱くなる。
もう、ここで活動することはないのだから。
背筋を伸ばし、卒業証書を受けとる。
微笑む校長先生をみて、もう一度頭を下げて舞台から降りる。
送辞、答辞、校歌、歌と卒業式が進むと、涙が溢れる。
でも、号泣はしない。
自分の決めた道だから。
溢れる涙をハンカチで拭いながら前を向いた。
卒業式も終わり、教室の最後のHRで卒業証書を受け取ったあと、みんなで担任にサプライズプレゼントをすると、うるっときたらしい先生にみんなも涙が頬を伝う。
「君たちは、これから新しい道に進むところです。
高等部に行く人も外部の高校に行く人も、縁があって同じクラスで過ごしました。
思い出は一生涯の宝物です。
このクラスで作った思い出は、このクラスの者にしかないはずです。
君たちがそれぞれの思いを胸に、幸せな人生を送ってください。
でも、辛いことがあったら、またいつでも尋ねておいで。
俺は中等部にいるから。
1年間ありがとう。
そして、これも、な?」
最後にプレゼントを掲げて、中等部最後のHRを終えた。