奏でるものは~第2部~


16日の昼頃までこうして、法要に来れなかった親戚や両親や兄の友人でもあり仕事関係の人たちや姉の友人がお参りに来てくれた。

夕方には玄関で皿におからをのせて火をつけて送り火をした。

「お盆も終わり、かな?」

「疲れたわね。ちょっと休むわ」


母が部屋へ行く。

多分、ほんとに疲れたのだろう。
母を見送って私も庭で兄はビール、私はジュースを飲みながら喋っていた。


「お姉ちゃんの指輪。
どういう物なんだろうね?」

「唯歌にも彼氏がいて、もらったってことなんだろ?
相手に心当たりある?」

「ないない。
お姉ちゃんの友達にも聞いたけど、分からなかったの」

「そうか……歌織ならその彼氏恨むか?」

「いや、別に。
誰も知らないならここにはわざわざ付き合ってましたって来ないだろうし。
私達、学校で本名じゃなかったから、何をどこまで知ってるのか分からないし、恨むとかそんな気持ちはないよ。
お兄ちゃんは?」

「そいつは恨んでない。
もしかしたら後悔して傷ついてるのかもしれない」


ひとつの命を奪った事故。
加害者は逃げなかった。

なんで?って思う気持ちはある。

でも加害者も加害者の家族も、被害者の私達とは違う様々な気持ちをもっているんだろう。
そして、姉の指輪の相手も複雑な気持ちを抱えているかもしれない。

「ちょっと、練習してくる」

気持ちを切り替えよう、そう思い立ち上がる。
兄は止めなかった。




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