眠れぬ王子の恋する場所


「あれ? 知りませんでした? 私と久遠さんがそういう関係だって」

まるで、当たり前のことだとでも言いたそうな顔をされ、どう返せばいいのかがわからなかった。

「そういう関係……?」

ただ、石坂さんが言った言葉を繰り返すことしかできずにいると、ニコッとした笑顔でうなづかれる。

「そうですよー。あ、昨日だって会食なんて嘘で私と会ってた……なんて言ったら、佐和さん、驚いちゃいますかね?」

ぐっと近づき、私の顔を覗きこむようにして笑う石坂さんから、ふわりと香水の香りが漂う。

昨日、久遠さんに移っていた香水が。

「久遠さん、言ってましたよー。佐和さんの身体はつまんないって。やっぱり、抱くなら柔らかいほうがいいんじゃないですかね。私みたいに」

にっと口の端を上げて言われた言葉は、私を侮辱するものだったのかもしれないけれど……怒りは浮かばなかった。

ただただ〝本当に……?〟という疑問だけが、ずっと私のなかを占めていた。

本当に、久遠さんが石坂さんにここを教えたの?
本当に、昨日石坂さんと会ってたの?

本当に、石坂さんとそういう関係なの?

石坂さんが言ったことのなかには、久遠さんから聞かなきゃわからないような事実もあるし、嘘ではないんだと判断できる。

それでも、信じられなくて、違和感に引っ掛かりを感じてしまうのは、私が勝手にしている期待のせいなんだろうか。

そんなハズないって、思いたいから……?

「というわけで、今日は久遠さんから伝言を預かってきたんです。〝俺が留守にしている間に伝えておいて欲しい〟って頼まれたので」

「伝言……?」とゆっくりと顔を上げると、すぐに視線がぶつかる。

自信の溢れる笑顔を浮かべた石坂さんが、〝久遠さんからの伝言〟を伝える。



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