眠れぬ王子の恋する場所
「会社から出てくる久遠見つけてマンションまでつけて、自宅を突き止めてから、石坂、やたらと静かになったから、吉井も怪しんでたけど。
計画としては、邪魔者の佐和がこの部屋にひとりになったときを見計らって、騙して追い出すつもりだったんだろ。さっきみたいに久遠からの伝言だとかなんとか嘘ついて」
眉を寄せぐっと俯いた石坂さんを見る限り、図星のようだった。
社長が石坂さんを怪しんでいるって、石坂さん本人も薄々勘付いていたってことだろう。
だから、会社では久遠さんの名前を聞いても、はしゃぐのを止めたんだ。
裏でこそこそやましいことしているからこそってことか……と考え、石坂さんわかりやすいな、と思う。
「最初は、久遠を手玉にとって金でも貢がせようって腹だったんだろうけどな。あまりに久遠が思い通りにならないから、腹いせに佐和を傷つけてやろうって考えたんだろ」
「私を?」と聞くと、社長がうなづく。
「自分が相手にされなかったことが相当悔しかったんじゃねーの」
「ああ、なるほど……」
「で、佐和を追い出したあとは、この部屋にで久遠を待って、また盛大に嘘つくつもりだったんだろ。〝久遠さんには付き合いきれないって出て行ったんです。私なら、そんな裏切り方は絶対しないから〟とかなんとか言って。
……浅はかな計画だな。自分勝手にもほどがある」
社長に、ひやりとした眼差しを向けられた石坂さんが、悔しそうに顔をしかめる。
奥歯を噛みしめる音が私にまで聞こえてきそうだった。
そんな石坂さんの表情を見て、満足そうな顔を浮かべる社長が続ける。
「まぁ、実現しなかった計画は置いといて。自宅まで押しかけたってなると、今までの待ち伏せとかつきまといっていう行為と合わせてストーカーとして被害届も出せる。
……残念だったな、石坂。久遠に取り入って金貢がせるつもりだったのになぁ」
ツカツカとこちらに歩いてきた社長が、石坂さんの顔を覗きこむようにして笑う。
もう、石坂さんに戦う駒はないっていうのに、そんな挑発みたいな態度をとるのはどうかと思いつつ眺めている先で、社長が思い出したように「あ、当然だけど、クビだからな」と明るく笑った。