眠れぬ王子の恋する場所


***

社長と石坂さんが帰ったあと、久遠さんと一緒に部屋に戻り、とりあえず簡単に朝ごはんを作った。

チーズが入ったオムレツと、焼いたベーコン、プチトマトとレタスのサラダ。それから、五枚切りのトーストを一枚ずつ。

朝のラジオを聞きながら、朝ごはんを食べ終わったあと、コーヒーを入れて、ふたり並んでソファに座る。

コーヒーを一口飲んだところで、口火を切った。

「石坂さんのこと、気付いたからホテル生活やめて部屋に戻ってきてたんですか?」

きっとそうかな、とは思っただけで、まだきちんと久遠さんから聞いたわけじゃない。

だから聞くと、久遠さんは持っていたカップをソーサーに戻しながら「まぁ……否定はしない」と曖昧に答える。

「おまえが風邪引いたときに、石坂ってやつと初めて顔合わせたけど、あれ以降俺の周りをうろうろするようになった。
どうやって調べたんだか知らねーけど、ホテルの部屋まで一度来たから、それ以降はホテルマネージャーにあいつの写真見せて、通さないように頼んだ」

「あのホテルに勝手にとか……すごい度胸ですね」

私なんて何度通っても、ボーイさんに止められたりしないかってドキドキしてたのに……。

「それでも、ホテルの周りうろうろしてるみたいだったから、ここに戻ることにしたんだ。あのホテルに泊まってんのは俺だけじゃないし、迷惑かけんのも嫌だし。
そん時に三ノ宮には〝おまえんとこの新入りの女どうにかしろ〟って話した」

「そうだったんですね……。それで、対策を練ったんですか?」

「三ノ宮がな。注意したところで聞くヤツじゃないからって色々考えてた。ホテルの周りうろついてるだけじゃ、業務妨害とかでも訴えにくいから、つきまといとか待ち伏せとか、合わせてストーカー被害として被害届出すのが一番手っ取り早いだろうって。
あいつ、学生の頃から頭がキレるから助かる」

普段いい加減だから、しっかりしているって言葉と社長のイメージがしっくりこなくて不思議に思えてしまうけれど、実際の社長はきちんとしているし頼りがいがある。

困った時、社長に相談すればどうにかなるって思っているくらいに。


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