眠れぬ王子の恋する場所


「石坂ってヤツ、あの調子だと自宅にまで行くんじゃねーかって三ノ宮が言い出したから、警戒はしてた。たしか、おまえがここに越してきた二日後だと思うけど。
石坂ってヤツが駅近辺うろうろしてるから、俺のこと探してんじゃねーかって三ノ宮に言われた」

「え……久遠さんを見つけて、自宅までつけようとかそういうことですか?」

そういえば、さっき社長もそんなような話をしていたけど。
だとしたらすごい執念だな……と、呑気にも感心してしまう。

だって、いくらどの駅ってアタリをつけていたとしても、駅を利用する人数なんてものすごいのに、その中から久遠さんを見つけようとするなんて……。

それだけ、絶対にこのチャンスを逃したくなかったってことかもしれない。
だって、久遠財閥の御曹司と同格の人と知り合うことなんてもうきっとないから。

久遠さんが、お金が絡むと人間が変わるっていつだったか話していたけれど、それは石坂さんのこともあってだったのか。

「そうだろうな。まぁ、部屋まで押しかけてくれば被害届出すときのデカい証拠にもなるし、ずるずるいくよりはそこで終わったほうが楽だとも思ったから、つけられてることに気付きながらも、そのままにしといたりはしたけど。
追うと逃げる可能性があるから、気付かないふりして迎え撃ったほうが確実だろ」

ソファの背もたれに寄りかかり天井を眺める久遠さんを、うしろにある窓から差し込む朝日が照らす。

レースのカーテン越しの日差しのせいか、久遠さんの表情が柔らかく見えた。

「言ってくれたら、私も気を付けたりできたのに……」

たぶん、香水はたまたまだ。久遠さんの仕事関係の人と石坂さんがたまたま同じものを使っていたってだけだろう。

久遠さんの口から聞いたわけではないけれど、石坂さんとなにかあったんじゃ……なんて疑おうとは思えなかった。

久遠さんは、私に嘘をつくような人じゃないから。

でも……私には内緒で、色々、段取りしていたのか。
なにも知らずに呑気に暮らしていた自分が馬鹿みたいに思えて抗議すると、久遠さんは横目を引っかけたあと目をつぶる。


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