眠れぬ王子の恋する場所
「もう誰も信じないんじゃなかったのか?」
真面目な眼差しで問われたことは、いつだったかケンカになったときに言った言葉だった。
きっと、久遠さんは私が石坂さんに言った言葉を聞いていたんだろう。
『久遠さんは、たしかに偉そうだし横暴だけど。そういう大事な話を人づてに済ませる人じゃない』
『ただ、私は、私が見て知った久遠さんを信じてるってだけの話だから』
だから、今、こうして聞いているんだろうっていうのがわかり、ふっと笑みをこぼした。
「そのつもりだったんですけど……絆されちゃったみたいです。いつの間にか久遠さんはそんなことしないっていう確信が私のなかにあって、だから、石坂さんが言っていることは嘘だって……自分でもびっくりするくらい、迷うことなく思いました」
涙は止まったのに、久遠さんの手は変わらずに私の頬に触れたままだった。
肩が触れる距離に、今さらドキドキと心臓が反応し出すから困ってしまう。
久遠さんが、こんな至近距離からじっと見つめてくるから余計に。
片手は久遠さんにソファに押し付けられているような状態になっていて、腰を引くことさえ許されない。
「あ、あの、久遠さん……近いから少し離れ――」
「俺のこと、信じてんの?」
意識した途端、一気に恥ずかしくなってしまい逃げようとしていると。
不意にそんなことを聞かれ……真面目な瞳に、うなづいた。
「……はい」
あんなに信じないようにって思っていたのに。
気付いたら、信じてしまっていた。
騙されるかもしれないって怖さも乗り越えて、久遠さんを信じている。
うなづいた私を見たあと、久遠さんはなにか悪態でもつくかと思いきや、静かな口調で問い掛ける。
久遠さんの口から出たとは思えないほど甘い問いを。
「じゃあ、好きだって言ったら信じるか?」
真剣なんだか無表情なんだかわからない顔で言われた言葉が、すんなりと頭には入ってこなくて……そんな混乱している私を見て、久遠さんが続ける。